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【デブの楽ちん珍し旅 Destino cinco】140円で1都3県大回り乗車の旅

おデブはなるべく出歩きたくない。仮に外出しても疲れるので歩くのは嫌だし、暑いので人ごみも嫌だ。趣味で出歩く場合を除いては。あまねくおデブがそうだとは言わないが、少なくとも記者はそうだ。


第5回は、JRの大都市近郊区間の特例規則を利用して隣の駅まで大回り乗車をする旅。まずは記者の自宅からJR最寄り駅である総武本線小岩駅にバスで向かうところから話をスタートしたい。

最初に規則を理解しておきたい。JR旅客各社の「旅客営業規則」には次のような規則がある。

第157条 第2項 大都市近郊区間内相互発着の普通乗車券及び普通回数乗車券(併用となるものを含む。)を所持する旅客は、その区間内においては、その乗車券の券面に表示された経路にかかわらず、同区間内の他の経路を選択して乗車することができる。
その大都市近郊区間とは以下の通り。
大都市近郊区間(JR東日本の営業案内ページ)

JRの運賃は実際に乗車する経路で決定する。例えば、東京駅からとなりの神田駅までの乗車券は大都市近郊区間内相互発着である。通常は山手線内回り電車(京浜東北線でも中央線快速でも同じ)に乗車して営業キロ1.3キロメートルで140円だ。しかし、山手線外回り電車で有楽町・大崎・渋谷・新宿・池袋・大塚・上野・秋葉原を経由して乗車した場合は33.2キロメートルだが運賃は140円で計算してもよいという特例だ。

この特例は、大都市の複数経路がある区間でいちいち実際に乗車する経路で計算していたら、自動券売機では発売が難しくなりその分の経費の方が高くつくので、旅客に自由に経路を選択してもらおうという趣旨である。また現在ではIC乗車券が多用されることになり、改札機で実際に乗車した経路を特定するのは不可能であり、最短経路で計算して運賃を差し引く仕組みになっているのでこの規定は好都合という側面もある。したがって、IC乗車券が使用できる駅の範囲が広がるたびに大都市近郊区間も広がっていくということになった。


難しいことはこれくらいにして、具体的なルールを説明しよう。

  • 東京・大阪・福岡・新潟・仙台の大都市近郊区間内相互発着の場合は、自由に経路が選択できるが、はみ出してはいけない。
  • 同じ駅を2度通ったり戻ったりという重複する経路を取ることはできない。要するに一筆書きでなければならない。
  • 途中下車はできない。もし途中駅で下車(改札を出ること)した場合は、その駅までの運賃を精算することになる。
  • グリーン車や特急列車には乗車区間の料金を支払えば乗車することができる。
  • JR西日本のごく一部を除いて新幹線は大都市近郊区間に含まれていないので乗車することはできない。
  • 乗車券の有効期間は当日限り。ただし0時を超える場合であっても終電までは有効。
  • 普通乗車券や回数乗車券でのみ適用される。定期乗車券ではダメ。
  • ICカード乗車券はOK。
このことから、隣の駅まで乗車券を購入して、またはICカードで入場して、逆向きの電車に乗って一筆書きで隣の駅にたどり着くことができればOKである。
鉄道マニアはこのルールを利用して、なるべく長い距離を複雑な経路を取って乗り回すことを旨とする場合が多い。しかし、そんなに乗り換えを増やして距離を稼いでも疲れるだけなので、今回は入門編として次のテーマを設けて取材した。

1.経路が簡単でありなるべく歩かなくていいこと
2.乗換駅では食事や休息が快適に取れる改札内施設があること
3.喫煙者のために大都市でも喫煙場所がある駅を選ぶこと
4.疲れないように一部区間で普通列車グリーン車を利用すること
5.綿密な計画を立てずに時刻表が不要なほど電車の本数があること


さて、以上のようなテーマに沿ってさっそくスタートしたい。小岩駅から購入する乗車券は隣の新小岩までの140円。
自動券売機で「小岩から140円区間」の乗車券を購入してもいいし、ICカードでそのまま入場しても構わない。その場合は133円だ。


記者は今回、取材のため指定券発売機で購入した。新幹線のきっぷを買うみどりの券売機だ。この券売機で購入すると運賃区間ではなく発着駅が表示される。券面の経由が総武(線)となっているが、前述したルールにより経由にかかわらず自由に経路を選択することができる。

なお、この乗車券はMV50という最新の券売機で購入したが、最初に英語メニューを選択して英語のタッチパネルで購入すると、写真のように英語併記のきっぷが出てくるので、英語に自信のある方はチャレンジしてほしい。ただし、購入間違いには十分注意したい。
券面のVALID 1 DAYは、日本語の券面では発売当日限り有効。No stopover permittedは下車前途無効の意味だ。


新小岩までの乗車券で逆方向の電車に乗車する。


総武緩行線(中央・総武線普通電車)しか停車しない小岩駅から千葉方面行きの電車に乗る。


最初の乗換駅は西船橋。総武線、京葉線、武蔵野線、東京メトロ東西線、東葉高速鉄道が乗り入れるターミナルだ。
改札内のカフェで軽い昼食をとる。もちろん喫煙室がある。


食事がすんだら、武蔵野線に乗り換える。


武蔵野線で今度は埼玉県の方向に進む。


14時17分発府中本町行きに乗車して終点を目指す。


国鉄205系電車がやってきた。この電車に1時間強乗車するので、景色を見たり寝たり好きなように過ごす。


府中本町に到着。今乗ってきた武蔵野線は新松戸で常磐線、南浦和で京浜東北線、武蔵浦和で埼京線、西国分寺で中央線に乗り換えることができるので経路選定の参考にしていただきたい。


府中本町は武蔵野線の終点なので、すべての列車は回送となって引き上げていく。乗り過ごす心配はない。


武蔵野線からの乗り換えは南武線川崎方面だ。


その前に休憩。改札内にコンビニもあれば、そば屋もカフェもある。お好みに合わせてお店を選べばよい。


記者はカフェを選択。喫煙室あり。


急ぐ旅でもないので、涼しいカフェでアイスコーヒーを飲みながら取材記事を書いて、ゆっくりと過ごす。


南武線は17時18分発の川崎行き。


川崎行の南武線電車がやってきた。これも終点まで乗るので乗り過ごす心配はない。


川崎駅に到着。実は、新小岩まで行くのであれば、武蔵小杉で横須賀線・総武快速線電車に乗れば一発で帰ることができる。
しかし、武蔵小杉駅の南武線から横須賀線のホームまではかなり歩かなければならないので、徒歩距離を少なくするためにあえて乗り換えを1回多くしてでも川崎まで来たのである。


南武線のE233系8000番台は最近投入された新車だ。


武蔵小杉で乗り換えなかった代償で、品川で乗り換えが1回増える。東海道線の電車に乗り換えて品川まで行く。


ここからは普通列車のグリーン車に乗車する。前もって紙のグリーン券を購入してもいいし、ホームでICカード乗車券にグリーン券情報を購入してもよい。いずれにせよ、乗車してからアテンダントから購入すると高額になるので、あらかじめ購入しておきたい。
また、普通列車グリーン券は一部を除いて通しで購入することができるので乗り換えも可能だ。この場合は川崎から新小岩までの通しの普通列車グリーン券を購入する。


上野東京ラインの東海道線電車がやってきたので、グリーン車に乗車する。グリーン車はダブルデッカー(2階建て)だ。


次の品川で下車する。


ICカードグリーン券を購入した場合は、席上のパネルにタッチしてグリーン券情報を読み込ませる。座席の移動も乗り換えもタッチすれば可能だ。


ICカードをかざせばインジケーターが緑色に変わり、車内改札を省略される。


2階席からの眺めは上々。リクライニングシートを倒してゆっくりしたい。


とはいえ、1区間しか乗車しないので品川で下車。


ここで総武快速線に乗り換える。


東京で乗り換えても構わないが、かなり歩かなくてはいけないので品川乗り換えとした。


品川駅はエキナカの老舗中の老舗。そば屋からカフェ、すし屋まである。また、グリーン車に乗車するならばロングシートではなくテーブルもあるので、気軽に駅弁を楽しむこともできる。


最後の乗車は18時29分発の総武快速線君津行きだ。内房線まで乗り入れる比較的長距離の列車だが、新小岩で下車するので乗り越しには注意だ。


横須賀・総武快速線のE217系電車がやってきた。


ここでもグリーン券情報が入ったICカードをタッチして赤色を緑色に変える。


アテンダントがカゴで飲み物や食べ物を車内販売してくれるので購入することもできる。もちろんIC乗車券で購入可能だ。
また、紙のグリーン券でインジケーターを緑に変更することができない場合は、アテンダントが車内改札で確認して緑に変更してくれる。


こうして新小岩駅に到着した。


記者の家は小岩からも新小岩からもバスで帰ることができるので、ここで大回り乗車の旅は終了だが、出発駅に戻る場合は一旦改札を出て隣の駅まで乗車券を買うか、あらかじめ往復乗車券を購入しておくと往復分の乗車券を出発駅の改札係員に手渡して「大回り乗車で戻ってきました」と言えばOKだ。
この場合、復路の乗車券には入場記録がないので自動改札機は通れない。必ず係員のいる改札を通ること。


もし、経路途中で車内改札があった場合は大回り乗車中であることを乗務員に告げて、旅程を説明すればよい。


夜のとばりが下りた新小岩駅。記者は当駅からバスで帰宅した。


乗車券は改札係員に欲しい旨を告げると、出場記録をしたうえで無効印や駅によっては乗車記念印を押印して返してくれる。規則上は旅行が終了した乗車券類は駅係員に引き渡さなければならないのだが、記念に持って帰りたい人が多いので現在ではたいていどの駅でも持ち帰ることができる運用がされている。

いかがだろうか。隣の駅までの乗車券で経路によっては一日中電車に乗って旅行することができる「大都市近郊区間の大回り乗車」を駆使して楽ちんな旅をしてみてはいかがだろうか。今回は入門編としてごく簡単な経路でお伝えしたが、機会があればもっと複雑な経路でマニアックな旅をお届けしたい。

※取材・執筆:古川智規 撮影:小野寺稔昭

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